もっと音そのものにフォーカスして
これまでmidori hirano名義で2枚のアルバムをリリースしている彼女が、新たに電子音楽主体のMimiCof名義での初のフル・アルバム『RundSkipper』を発表した。現在、ベルリンを拠点に活動を続ける彼女にドイツと日本のシーンに対する印象や、MimiCofとしてのコンセプトについて話を伺う。
——まずは音楽を始めたキッカケを教えてください?
「あんまり覚えていないんですが(笑)単純に近所のお姉さんがやっていたのを見て、自分もやってみたいなと。ちょうどバブル時期の前後だったので一家に一台ピアノがあるという状況で同年代でもピアノを習っている子が多かったです」
——クラシックから電子音楽に移行したキッカケは?
「自分のなかではそんなに区別していなくて、ピアノだけで表現しきれなくなったことをコンピュータで表現するようになったというか、違和感なく延長線上にある感じです」
——今回の別名義 MimiCofでのリリースに至る経緯は?
「midori hirano名義では自身のバックグラウンドを活かして生楽器を多用していますが、活動を始めた当初からコンピュータは使用していたんです。それでベルリンに引っ越してからは電子音楽をよく聴くようになってきたこともあって、気分転換というかちょっと違ったことをやりたいなと思って」
—— midori hiranoでの作品との違いというか、区別しているところは?
「音楽そのものに対するアプローチは一緒なんですけど、midori hiranoの場合はメロディーとか抑揚みたいなものを大事にしていて、MimiCofの場合はもう少し抑揚を削ってもっと音そのものにフォーカスするというか音の質感を大切にしています」
——今回のアルバムのコンセプトなどあれば教えて下さい。
「制作に入る前にひとつのはっきりとしたコンセプトを決めているわけではないのですが、日々の生活で感じる小さなコト、人との繋がりとか光の差し込む具合とか、そういうものを音に変換してゆくというか。わりとゆったり構えて制作しました」
——ベルリンに行かれたのはキッカケは?
「昔クラシックをやっていたときからドイツの音楽には興味があったんですが、電子音楽を制作するようになってからは好きな作品もドイツのものが多くなってきて。2008年にベルリン映画祭主催の映画音楽のワークショップに一週間参加させていただいたときにいろいろな人と出会ったり、実際に街を歩いてみて、『住んでみてもいいかな』と思って。とりあえず1年位住んでみようということで2008年の10月に行ったんですが、もうあっという間に3年になります(笑)」
——ドイツと日本の音楽シーン含め、リスナーの傾向など、違いを感じることはありますか?
「日本の音楽的な幅の広さと比べると、ベルリンではもっと棲み分けがハッキリしているというか、実験音楽だったら実験音楽、テクノだったらテクノというふうに互いに行き交うということは少ないんですが、その分それぞれの分野で突き詰めていることが深いという印象はあります。それから日本では静かにじっくり耳を澄ませて聴く感じですが、向こうでは飽きたら会場内でおしゃべりをしたりとか、日常の一部として音楽を聴くスタイルが定着していて気軽にコンサートに訪れる人が多いです」
——年齢の幅はどうですか?
「日本と比べて入場料がすごく安くて大体1000円以下で観られるので、老若男女気軽に訪れてくれます」
——いまでは日本人アーティストがベルリンで活動するというのはそんなに珍しいことではないと思いますが、多くのアーティストを惹きつけるベルリンの魅力とは?
「まずひとつは物価、家賃が安いこと(笑)。それからヨーロッパの中心にあるので、ツアーに廻りやすいという利点もあります。あとは街全体に開放感があって自分と向き合いやすく、制作に集中しやすい環境があるという点も魅力だと思います」
——配信優位の時代と言われCDの売り上げが落ちてきていて、日本でも大型CDショップが閉店したりなどしているのですが、ドイツでそれを感じることはありますか?
「でも日本はまだすごくCDが活躍していると思います。先日、久しぶりにタワレコに行ってすごくワクワクしました(笑)。ドイツではほとんどCDは売れなくて、逆に(アナログ・)レコードが多いですね。あとはMP3で配信するとか。最近はレーベルごとにオンラインショップを持っているので、そっちで買う人も増えているみたいです」
——そういう事情が自身の活動に影響したりなどはしますか?
「あまりないですね。そういう状況であるということは頭の片隅にあるのですが、基本的にはモチベーションそのものが左右されるということはありません」
——今後の展望などあれば教えて下さい。
「まずは階段を上るような気持ちで、MimiCof名義でもう一枚アルバムを制作したいなと思っています」