映像から物語への進化

映像との親和性が高い視覚的ともいえる音像を生み出す、シネマティック・インスト・バンド、L.E.D.。彼らはどのような音楽を目指しているのか。そして、先日リリースされた、バンドのコンセプトをタイトルにしたとも思える『Music For Cinemas e.p.』に込めた思いとは。ベースの佐藤元彦氏とドラムのオータコージ氏に話を聞いた。
——いまはシネマティック・インスト・バンドと言われていますが、結成当初はミクスチャー・ロックみたいな音楽をやっていたそうですね。
佐藤(以下S)「L.E.D.の前身バンドにあたりますが、ミクスチャー・ロックのバンドでした。僕が歌ってましたね(笑)」
オータ(以下O)「そのときには、僕はまだ入ってないです」
——インストではなかったんですね。それは何年ぐらい前ですか?
S「15年ぐらい前ですね」
——結成当初から映像的な音楽をやろうという意識はあったんですか?
S「映像的な音をという意識はまだなかったですが、インストバンドをやってみたいというのはこの頃から思い始めてました。」
——いまの7人のメンバーになったのはいつごろですか?
O「ファースト・アルバムをリリースする直前ですよ」
S「2年前ですね」
——どのような経緯でいまの7人になったんですか?
S「その前身のミクスチャー・ロックのバンドをやっているときから聴き始めんですが、マッシヴ・アタックやポーティスヘッドなどのいはゆるブリストル・サウンドとか、ニンジャ・チューンのようなインストに近いトラックメイカーの音にとても刺激を受けました。それと同時に70’Sの電化マイルスやWeatherReportなんかのジャズフュージョンなども聴き漁るようになって歌に軸を置かないサウンドに傾倒していきましたね。それで自分でもそんな風な音を作ってみたいと思って、機材を買いそろえて一人、手探りではじめてみたんですが、なかなか思ったようにうまくいかなくて。結局、電化マイルスやWeatherRepotの影響もでかかったので、打ち込みでひとりでやりきるよりもまた一からメンバーを集めて生バンドでやってみたいという気持ちになったんです。ちょうどその頃、他のバンドのサポートで一緒だったオータ君とライブを観て一目惚れしたサックスの加藤君(L.E.D.でサックスを担当している、加藤雄一郎氏)に声をかけました」
O「そこからいろいろな現場で出会ったいいプレイヤーを誘っていったんです。他にも歌ものバンドをやっている連中がインストをやろうということで集まったバンドなので、誘いやすいんですよ。ちょっと遊びに来てよというニュアンスで誘える(笑)」
さ「そうそう。メンバーになってくれよという感じでは誘ってないですね(笑)」
——シネマティック・インスト・バンドというキャッチコピーは誰かがつけたものですか?
O「会議でつけました。キャッチコピーのようなものがあったほうがいいんじゃないかと言われたんです(笑)」
S「そういうことです。スタッフ含めみんなで考えたんです」
——そのキャッチコピーがついたのはいつごろですか? ファースト・アルバムのころはなかったですよね。
O「今年に入ってからです」
——『Music For Cinemas e.p.』はそのキャッチコピーがついたあとに制作したんですね。
S「そうです。L.E.D.を始めた頃から映画のサントラをやってみたいという気持ちはずっとあって、ただ、なかなかそんなオファーが来るわけでもないので、このEPで自分たちで勝手に仮想オファーを受けたていで作ってみたんです。(笑)そういう仮想サントラというコンセプトをたてたせいか、意識せずとも、できあがった曲の中に自然と物語のような流れができてたんです。」
O「ファースト・アルバムには映像が見える音楽があって、セカンド・アルバムには風景や景色が見える音楽がある。このEPはそこから一歩先に進んだと思います。映像が積み重なっていって、ひとつの物語になっている。映像から物語へと進化しましたね」
——映画のサントラのオファーがあったら受けたいと。
O「そういう願いはあります」
S「受けたいですね!」
——制作はどういった流れで進んだんですか?
S「僕は、サントラとなればまずSFを思い浮かべるほどSF好きで、2001年宇宙の旅やBLADE RUNNERのようなSFっぽい感じのものをいつかやってみたいと思ってたんです。それで、曲作りを担当した僕と鍵盤の横山でミーティングしたとき、今回はデカくて抽象性の高いSFイメージでつくらない?と持ちかけたら、横山もちょうどそのとき作り始めてた曲(countless)がまさにそんなイメージだったので、じゃあ、それでやってみよう!となりました。僕がoneを横山がcounlessをそれぞれ同時進行で土台を組み上げて、順次、メンバーのパートを加えたり、生に差し換えたりして作って行きました。」
——このタイミングでリリースすることになったのはなぜでしょう?
O「今年の朝霧ジャムに出て、多くの人にL.E.D.のことを知ってもらいました。そこでもう少し知名度を上げておこうという狙いです(笑)。サード・アルバムを作ることも決まっているし」
S「そう。サード・アルバムを作ろうという話はこのe.p.の前にでてたんです。」
O「ところで、このジャケットの話はするのかな? このジャケットのデザインは、近藤君(『Music For Cinemas e.p.』のジャケットのデザインを手がけた近藤康平氏)がツイッターでつぶやいたことから始まったんですよ」
S「近藤君が夢の中でL.E.D.の音楽を聴いていたみたいなんです。そうしたら、このジャケットに描かれているイラストの風景がその音イメージとして動画映像で見えてきたらしいですよ」
O「夢のなかでL.E.D.の音楽を聴きながら、周りの風景を見ていたら、その風景が端の方からいろんな色の粒子に変化していった。そんなことをツイートしてたんですよ。風景が粒子に変化していく。それは映像から物語への進化と同じだなと思いました」
S「そうだね。近藤君のツイートを見て、今回のコンセプトにぴったりだなと思いました」
——通常、どういった流れで制作をしているんですか? L.E.D.には16分ぐらいある曲もありますよね。
S「ケース・バイ・ケースですね。その16分ぐらいある曲というのは、セカンド・アルバムに入っている、”ignis”のことですか?」
——そうです。
S「バンドでジャムっていたら、だんだんいい感じになってきたから、30分ぐらい続けていたことがあったんですよ。スタジオではレコーダーを回しっぱなしにしているので、それも録音していたんです。”ignis”はその音が元になっています。30分のなかからいいところを切り取っていって、繋いでいったら曲ができたんです。そういう流れでできることもあります」
O「それはこのバンドの特徴だと思うんですよ。このバンドはいつも行き当たりばったりで、適当に進んでいるように見えるんだけど、ミラクルが起こっているんです」
S「噛み合うよね」
O「そうだね。奇跡だね。このバンドは奇跡が起きなくなったら終わりますよ(笑)。手探りで霧の中を進んで行ったら、その奥にすごくいいものがあった。そういう感覚です。なにも見えないなかを、手探りで進んでいくのがおもしろいと思った連中が集まったバンドなんですよ。だから、考えちゃうとだめ。楽しくない」
——そのように手探りで曲を作っていくと、完成のポイントがわかりにくくなりませんか?
S「どこが完成なのかわからないことはありますね。僕が曲をつくってるときは、完成ポイントは完全に体調が左右する(笑)。曲を作っているときに、あるラインを越えればゴールは見えてくるんです。これはこのへんでいい感じになるだろうというとこはだいたい掴めてくる。でも、すごく体調がいいときには、そこから先に行っちゃうんですよ。体調が悪いときにはそこまでで扉を閉めちゃう。体がもたないんであえてそこまでを完成としちゃいます。もうその先に行かない(笑)。」
O「日記に近い感覚ですよ」
S「ああ、そうだね」
O「今日の出来事を記したものが曲になるんです。たとえば、京都に旅行に行くとします。そうすると、清水寺に行って、金閣寺に行って、銀閣寺に行くというようなルートを決めますよね。しっかりした人は清水寺に行って、金閣寺に行って、銀閣寺に行く。それで京都旅行が完結ですよ。L.E.D.は清水寺に行って、金閣寺に行って、体調が悪くなったから銀閣寺に行かずに帰った。それでも京都旅行は完結するんです。そこに手抜きはない。そのことをちゃんと記しておこうというニュアンスです」
——今回は1曲のなかに物語を描くことができたということですが、そういうことをアルバム1枚の流れの中で表現したいという思いはありますか?
S「それは毎回思っています。とはいえ、緻密に考えて1曲目にこういう曲をもってきて、2曲目にこういう曲をもってくる。そういう作り方をしようという考えはいまのところありません。L.E.D.のメンバーはみなが曲を作れるので、それぞれが作った曲を集めると、いい感じにばらけるし、うまくまとまるということもよくあるんです。」
O「みんな個性的ですからね。それぞれが作った曲を集めていくと、いろいろなテイストの曲が並んで、起承転結ができちゃうんです」
——メンバー間のバランスがうまく取れているんですね。
O「そうですね。いい加減ですけど。そのいい加減さがいい方向に作用していけばいいなと思います。作品もライヴもどこに行くか分からないけど、ワクワクしてる。ワクワクしてるから突き進もうよっていう、変な爆発力やエネルギーを持ってやっているつもりです(笑)」
——長く続きそうなバンドですね。
O「どうなんでしょう。さっき言ったような、手探りで進む感じが楽しいというのはあります。手探りの先に大きなものがあったから、サード・アルバムの制作も進められるんです。手探りで進んで行って、その先に何もなかったということになったら、バンドは続けられないんじゃないかな」
S「だから、その先になにもなかったというのが一番恐いんですよ。そういう意味では、緩い遊びも残しつつも、すごい緊張感を持ってやってはいますね。」
今後の目標にしていることは何かありますか? こういう作品を出したいとか、このフェスに出たいとか。
S「今回、朝霧ジャムに出演して実感できたんですが、大きな舞台に出ると、バンドの空気が変わりますね。そういう場をもっと踏んでいったとき、バンドがどうなっていくのかを確かめたいですね。やっぱり、そういうのおもしろいですよ。フェスにいっぱい出たいですね。フェスばっかり出たい!(笑)」
O「出たいね。フジロックとか(笑)」
S「うん、フジロックに出たい(笑)」
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